ペロー自然科学博物館(Perot Museum of Nature and Science)

「ペロー自然科学博物館」のご紹介

博物館は様々なテーマで作られ、子供から大人まであらゆる人々の好奇心を掻き立てることのできる施設です。普通の博物館は様々な所蔵品を展示したり、学芸員の解説などが行われたりしていますが、「ペロー自然科学博物館」は建物そのものからも学ぶことのできる博物館で、内陸の大都市に建設されています。

「ペロー自然科学博物館」の設計者

「ペロー自然科学博物館」を手掛けたのは、アメリカ合衆国の北東に位置するコネチカット州のウォーターベリー出身のトム・メインです。カルフォルニアにある大学で建築を学び、卒業してすぐに数人の建築家やデザイナーと共に「モーフォシス Morphosis」と言う事務所を開設しました。モーフォシスとは物事の成り立ちや形作る過程を示す単語で、彼らの事務所が常に変化し続ける事を表していると言われています。事務所を立ち上げるのと時を同じくして、カルフォルニアに新しい建築専門の大学を設立するために尽力しています。モーフォシス開設から数年して再び大学に戻り、さらに都市計画などの研究も重ねています。ハーバード大学の大学院で学士号を取得してからは、都市計画家としても活動を始めました。また、複数の大学で教鞭をとるようになり、建築を通して教育や文化の発展にも寄与しています。彼は、様々な事柄に独特の考えを持っている為、色々な場面で議論される事もあります。例えば、2012年に亡くなった、有名なSF作家のレイ・ブラッドベリが半世紀に亘って住んでいた家を買い取った後、簡単に解体してしまった事にブラッドベリのファンは大きなショックを受けていました。しかし、彼もブラッドベリのファンであったようですが、その家は普通の家で、遺族は家に対して執着はなかったと彼は判断したようです。跡地にはトム・メインの自宅が建設される予定とのことです。

「ペロー自然科学博物館」の所在地

「ペロー自然科学博物館」は、アメリカ合衆国の一番南の州であるテキサス州ダラスに建っています。ダラスは19世紀の半ばに正式な市制が敷かれましたが、テキサスは現在のアメリカの南端に当たる地域なので、政治が安定するまでに時間がかかった場所です。植民当初はスペインの支配下で、メキシコの一部でした。イギリスからの植民が多かったこの地域は、1836年にメキシコから独立し、10年間と言う短い期間でしたがテキサス共和国と名乗っていました。1845年にアメリカに併合され、テキサス州となって、ダラスも正式な自治体の一つになりました。街の名前は11代大統領の名前に因んで付けられました。この地域は、植民の最初の頃から綿花の栽培が行われていて、現在も国内は元より世界でも有数の綿花の生産地です。20世紀に入って街の東で油田が発見されてからは、経済が大きく成長して、今に至り、国内でも富裕層の多い地域の一つとなっています。経済が豊かになると商業も勢いが増して、国内で2番目にショッピングモールが建設されたのもこの街です。この傾向はい現在でも続き、人口当たりのショッピングモールの数は国内で1番多くなっています。

「ペロー自然科学博物館」の特徴

「ペロー自然科学博物館」は2006年に開館した自然史と科学に特化した博物館です。この建物の外観で1番目に付くのは、灰色のコンクリートの壁に斜めに取り付けられているガラスの箱のような物体です。これは、内部におよそ16mエスカレーターが設置されている場所で、長さが46mあります。一気に最上階まで上がるためのエスカレーターで、ダラスの街の広がりを見ながら移動できるようになっています。地上6階、地下1階の建物ですが、通常なら14階の建物に相当する高さがあります。外壁はコンクリートですが、幾種類かの型を作り、そこにコンクリートを流し込んで作られたパーツを組み合わせて設置されています。このデザインは地層を模倣していると言われていますが、川の流れや、静かな波のようにも見えます。味気ないようなコンクリートの外壁でも、とてもスタイリッシュに出来る良い例と言えるでしょう。展示物などがある本館部分は、平たい建物に埋め込まれたような感じになっていて、1階の屋根には地元で採石されている自然石が不規則に敷かれ、この地域の気候にあった植物が植えられています。ゼリスケープと呼ばれる水の使用を抑えた庭園には乾燥に強い植物が植えられていて、ゆるやかな傾斜が付けられているので、本館の立方体が浮かんでいるようにも見えます。

「ペロー自然科学博物館」のまとめ

「ペロー自然科学博物館」の設計をしたトム・メインは、教育や文化の発展を建築を通して行えると考えています。この博物館は正に彼の言う通りの建物となっています。地球の成り立ちは館内の展示物で教えられますが、環境に対する負荷などはこの建物自体で教えることが出来ます。「ペロー自然科学博物館」は博物館の趣旨にも合う、省エネルギーと飲料以外の水の再生など環境に配慮した建物で、アメリカとカナダで活用されている「グリーンビルディング」の基準の内、最高値の4つをクリアしています。「ペロー自然科学博物館」の名称は、この博物館建設のために多額の寄付をした実業家ロス・ペローの名前が冠してあります。

 

余談ですが、トム・メインはブラッドベリの家を解体した後の廃材で451個のブックエンドを作って寄贈しています。451と言う数字は、ブラッドベリの著書の一つ「華氏451度」に因んだ数です。

 

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