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「パンヤーデン インターナショナル スクール」のご紹介
竹は日本国内では身近な存在ですが、湿潤で温暖以上の気候でないと育たないので、世界規模で見ると意外と狭い範囲でしか自生していません。竹には様々な特徴があり、中でも二酸化炭素の吸収率が格段に高いことが挙げられます。また、しなやかでありながら非常に強靭な事も大きな特性です。このような竹の特性を最大限に利用した建物が、南アジアの国、タイに建設されています。「パンヤーデン インターナショナル スクール」には、竹を使ったたくさんの建物が散在しています。
「パンヤーデン インターナショナル スクール」の設計者
「パンヤーデン インターナショナル スクール」の多くの建物を手掛けたのは、オーストリア出身の医師であり建築家のマーカス・ロズリーブが率いる、「チェンマイ ライフ アーキテクト&コンストラクション(アーキテクトは建築、コンストラクションは構造を表します)」です。ウィーンで生まれたマーカス・ロズリーブは、祖父が医師であり、自身も学業の成績が良かったことから、自然と医者になる道を選んでいました。彼はアジアの思想や哲学、仏教の教えなどに大きな興味を持っていて、医師として政府の機関で働くことになった時にタイへやってきたのが20代半ばでした。1年間タイで働いた後、2年間はオーストリアで働き、再びタイへ戻って難民キャンプ周辺で医師を続けていました。その当時から、自分の住んでいる家の修理や改装、建設などを好んで行っていたようです。彼は、子供のころから家を作る事にも興味を持っていたと言っています。バンコクにいた頃に古い家を買って住んでいましたが、モルタルと鉄筋で出来ていた家は潮風に晒されて脆くなっている箇所がたくさんあり、常に修理を行っていました。その様な経験からもっと良い素材が無い物かと探して、見つけたのが竹でした。竹を使って建物を作るにあたっては、地元の人々の知識と技術が必要であったことから、彼のスタッフは難民キャンプに居た人や、地元の人がほとんどです。
「パンヤーデン インターナショナル スクール」の所在地
「パンヤーデン インターナショナル スクール」は、タイ王国の北部にある高原地帯の都市、チェンマイにある、幼稚園から中等教育を行う仏教の教えと環境を考えることを重点とした学校です。チェンマイとはタイの言葉で「新しい都市」と言う意味があり、最終的にタイランド湾にそそぐ、チャオプラヤー川の最大の支流であるピン川に沿って街が広がっています。この街は、13世紀の終わりから18世紀の終わり頃まで続いた、ランナー王国の首都を務めていた街でした。ランナー王国の最初の首都は、北東に約150kmのチェンライでしたが、1296年に新たな首都としてチェンマイが建設されました。古来より重要な都市だったことから、100以上のワットと呼ばれる仏教やヒンズー教の寺院が残されています。ワットとはサンスクリット語で「囲い」を意味する単語で、王室によって建立された寺院やそれ以外の公共の寺院など、比較的大規模な建築物を指しています。また、街の中心部を取り囲むように建設された城壁も残っています。これらの建築物は、この街の観光資源となっていて、国の内外から多くの観光客を惹きつけています。熱帯の気候なので、1年を通して日中の気温は30℃を上回りますが、日本の冬に当たる時期には乾季となるので、夜間の気温は15℃前後になります。降水量は夏の雨季に多く、特に8月と9月に集中しています。
「パンヤーデン インターナショナル スクール」の特徴
「パンヤーデン インターナショナル スクール」の校舎は、ほとんどが竹で作られています。2010年に設立された比較的新しい学校で、環境を考えることを重点の1つとしています。竹は成長の過程に於いて多くの二酸化炭素を吸収しています。筍として地上に生えてきたときから竹になるまでの短い期間には、特に大量の二酸化炭素を吸収していて、竹を切る時や輸送の段階で排出される二酸化炭素の量より多いと言われています。加えて、しなやかでありながら強靭さも備えているので、少し前の時代では日本でも鉄筋の代わりに使われていたことがあります。全て竹で出来ているのは、「サラ」と呼ばれる屋根だけのオープンスペースや体育館としても使用できるホールです。2017年に完成したホールは、300人を収容できる大型の建築物で、竹で作られた建物としては世界最大を誇っています。竹は複数の種類が使用されています。南アジアには厚みが数㎝もあり、直径が30cm以上にもなる巨大な竹が自生していて、柱などに使われています。細い竹は複数を束ねてアーチ状に使われている部分もあります。竹はホウ砂(ホウ酸塩)を溶かした水にしばらく浸した後、しっかり乾燥させたものが使われています。これは竹の中の糖分を抜き、防虫や防水、防腐効果を高めるためです。(ホウ砂は人畜無害で、人体に必要なミネラルの1つでもあります。)教室などの壁のある建物の壁は、伝統的な作り方の土壁になっています。吸湿性や通気性がよく、熱帯の気候ですが空調機械を使用しなくても涼しく過ごせるようになっています。
「パンヤーデン インターナショナル スクール」のまとめ
ホールの形状は、仏教に於いて神聖な花である蓮の花のつぼみを横にしたデザインになっていて、仏教の理念を表しているようにも見えます。屋内の竹を組み合わせた天井や柱は、繊細な竹細工を思い起こさせ、美しいとさえ言える屋内になっています。「パンヤーデン インターナショナル スクール」は建物そのものが、この学校で教えている事柄の実践的な教材とも言えるのではないでしょうか。
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