済州島ティーハウス(Jeju tea house)

「済州島ティーハウス」のご紹介

 

日本家屋にも見られるような作りが随所にちりばめられている建物が小高い敷地の庭に建っています。「済州島ティーハウス」は、母屋から少し離れた場所に建てられたゲストハウス若しくは、離れのような建物です。小さい規模の建物ですが、洗練された粋のある雰囲気を漂わせています。

「済州島ティーハウス」の設計者

 

「済州島ティーハウス」の設計とデザインを担当したのは、ポルトガル人のアルヴァロ・シザ(または、アルヴァロ・シザ・ビエイラ)です。正式名は、アルヴァロ・ホアキン・デ・メロ・シザ・ビエイラと言いますが、ポルトガル国内ではシザ・ビエイラと呼ばれています。1933年にポルトガル北部の古都ポルトの近くにある小さな海辺の町、マトジニョシュで生まれ育ちました。ポルトの大学で建築を学び、卒業前にはポルト市内の民家も手掛けています。大学を卒業してからしばらくは、ポルトガルの著名な建築家の元で実務を経験し、1955年に独立して自身の建築事務所を開設しました。彼の作品は白を基調としたものが多く、シンプルな作りで、モダニズム建築に通ずる所があります。簡素な建物は現代的なイメージがありますが、彼の手法は建築技術だけでなく様々な事柄に於いて伝統も重んじています。例えば、歴史のある古い街に建てられる場合には、建築場所の風景に溶け込むようでありながら、目立ちすぎないように主張する建物を作り出しています。彼の作品はポルトガル国内が多く、特に生まれ故郷近くの都市ポルトに有名な建築物が集中しています。近年では中国や韓国などアジアでも彼の作品が建設されています。建築家として活躍しているなか、若手の教育にも熱心で、いくつかの大学で教鞭をとっています。

 

「済州島ティーハウス」の所在地

 

「済州島ティーハウス」が建っている済州島(チェジュとう)は、大韓民国の本土から南へ約100kmの海に浮かぶ大きな火山島です。広さは四国の香川県とほぼ同じ面積の楕円形の島で、地理的条件などから様々な分野に於いて珍しい島となっています。島の中央にある漢拏山(ハルラ山)は国内最高峰の山で、数万年前までは活発な火山活動があったようです。この島は全てが漢拏山で成り立っていると言う仮説もあり、その仮説は島の形状からもうなずく事ができます。標高は2,000mに満たない山なので、登山に訪れる人も多いのですが、山体の維持のために頂上への登山は規制がかけられています。春には複数種のツツジが咲き乱れ、秋には美しい紅葉も見られるので、1年を通して観光客が途絶えることはありません。加えて溶岩の洞窟なども点在していて、2007年にはユネスコの世界遺産に登録されました。また、自然現象として変わった雲の流れを見ることのできる場所です。気象学で「カルマン渦」と呼ばれる気流が発生する、世界でも数少ない場所となっています。一定の方向から強い風が吹いた時に、島の風下に交互に渦を巻く気流が発生する、台風が通過するような時に起こる現象となっています。歴史的にも独特の歩みがあって、15世紀の頃まで耽羅(たんら)と言う独立した1つの王国でした。7世紀の頃には日本との交流もあったようです。

 

「済州島ティーハウス」の特徴

 

「済州島ティーハウス」は、ゲストルームまたは、離れと言えるような建物で、海を見下ろす小高い場所に建てられています。モダニズム建築の先駆者と言える、ミース・ファン・デル・ローエやフィリップ・ジョンソンの作品にも見られるような、ガラスの家のような建物です。しかし、彼らのガラスの家とは雰囲気が全く違います。むしろ、日本家屋のようなイメージがある、小ぶりで簡素な作りになっています。束石と呼ばれる台座の上に柱を立てる工法が使われていて、いわゆる外壁と呼べるような部分はほとんどありません。長方形の平屋の中心部分に大きな部屋が作られ、周りには廊下が作られた所と、そのまま庭に繋がる部分があります。外壁の代わりに木製の窓枠に大きなガラス窓が周囲に取り付けられています。部屋を仕切ったり、プライベート空間を作りたいときには「ふすま」のような移動式の戸を閉めるようになっています。天井は、日本のお寺などで見られる「升組み」のような作りになっています。建築素材にこだわって、木材と天然石と銅が使われています。柱や壁、天井と屋内の固定された調度は、アフゼリアやドウシェと言うアフリカ産の赤茶系の木材が使われています。束石や庭に続く石畳は地元の石材が使用され、屋根には銅板が使われています。風景に溶け込ませるような建物を心掛けている設計者のアルヴァロ・シザらしく、母屋の海側に作られた庭園と一体化したような建物ですが、ある種の存在感もあります。

 

 

「済州島ティーハウス」のまとめ

 

「済州島ティーハウス」を手掛けたアルヴァロ・シザの作品は、モダニズムの影響を受けていると言われる事がよくあります。確かに彼の作品はシンプルで飾り気の少ないものが多いのですが、それは建物に自己主張をさせないと言う彼の思いがあるからでしょう。しかし、彼の作品は歴史や風景と一体化するように作られていながら、その風景の格が上がるような印象を与えているようです。風情のある庭園に「済州島ティーハウス」が加わったことで、その庭は数段も良い景色となっているのではないでしょうか。

 

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