ブライバッハ　コンサートホール（Concert Hall Blaibach）

「ブライバッハ　コンサートホール」のご紹介

地方の開発には都市とは違う課題があります。活性化する事はもちろんですが、その地域に特有の環境や歴史などを考慮した上で、その土地にふさわしい企画を立てなければ永続的な結果は得られません。ドイツの田舎の村に持ち上がった開発計画には、歴史的に大事にしたい建物や古い家を改装したものなど、複数の建物が関わっています。その中の中心的な建築物が「ブライバッハ　コンサートホール」です。

「ブライバッハ　コンサートホール」の設計者

「ブライバッハ　コンサートホール」を手掛けたのは、ドイツ人建築家のピーター・ハイメル（または、ピーター・ハイマール）です。彼は、1961年にドイツ南東部のバイエルン州にあるエーベンで生まれました。ミュンヘンの大学で建築を学び、卒業後はいくつかの建築事務所で実践を重ねました。1991年に独立して自らの建築事務所「ピーター・ハイメル　アーキテクチャー」を開設しました。彼が手掛けているのは、公共の団体や自治体などの企画が多く、都市計画にも携わっています。また、地方の活性化に伴う建築や地域の開発計画にも関わっています。彼はこれまでの建築を越える事を目指していて、様々な問題を解決するために独自の考えを持っています。奇をてらった物ではないけれど、型破りでありながら人々を引き付ける魅力ある解決策を考案しています。他にも、従来の考えに縛られない新しい方策も開発しようとしています。事務所を開設した後には、建築家としてだけでなく様々な活動をしています。例えば、後進のために大学で建築とデザインを教えています。また、多岐にわたる分野の専門家や研究者と協力して解決策を模索するためのネットワークを構築して、自由に意見交換ができるような場を作っています。2018年には伝統あるドイツの芸術アカデミーのメンバーに選ばれています。

「ブライバッハ　コンサートホール」の所在地

ドイツ連邦共和国の南東に位置していて、国で最も広いバイエルン自由州に含まれているブライバッハと言う村の中心部に「ブライバッハ　コンサートホール」が建設されています。バイエルン自由州は、アルプス山脈の北側に広がる内陸部の山岳地帯で、広大なバイエルンの森が広がる地域です。ブライバッハはバイエルンの森の東端に近く、隣国のチェコ国境から約20kmの小さな村で、ここに住む人々は「ブロアバ」と呼んでいます。居住人口は2,000人に満たない田舎の村ですが、この地の名称が歴史に登場してから900年近くが経っています。12世紀の終わり頃に、この地の農場が修道院に寄付された事が1番古い記録として残っています。しかし、個々の農場はありましたが、単一の自治体としては19世紀に入ってバイエルン州の憲法が制定してからでした。その時に、この地域にあったいくつもの村が正式に自治体として成立しています。村の正式な紋章は、最初にこの地の名前が記された時の修道院の紋章で、赤地に木槌と金の盾を持った銀のドラゴンが描かれています。また、ロゴマークは2014年に新しいものが作られています。赤地にブライバッハのBが記され、Bの文字の中にコンサートホールの図案化されたシルエットと星が描かれています。同時に、村の謳い文句が「ここで音楽が奏でられます！」と決まりました。

 

「ブライバッハ　コンサートホール」の特徴

正面の入り口方向から見ると、巨石が地面に沈み込んでいるような印象のある建物が「ブライバッハ　コンサートホール」です。実際には敷地に高低差があり、巨石を斜面に傾けて乗せたように見えます。建物はコンクリートで作られていて、外壁はタイル状にした花崗岩で覆われています。レンガ色に近い色合いと質感で、天然石そのもののようなイメージがあります。このような外観を持たせたのは、地元に古くから使用されている建材であることと、付近の景観になじむような見た目にした為です。入り口から階段を下りた所にホワイエやその他の設備が整えられていて、打ち放しコンクリートの床と壁に木材を使用した天井が独特の雰囲気を醸し出しています。ホールの内壁は、重量を軽減することと、音の響きや吸収量を考慮して、ガラスコンクリートと呼ばれる素材が使われています。形状は、少しづつ角度や深さを変えて不規則に重ねたように見える作りになっています。ランダムに見える隙間は音響学の専門家と設計者が協力して、最高の音が観客に提供されるようにした結果です。隙間には音の吸収材とLED照明が設置されています。直線的で不規則な隙間から漏れ出るような照明は、演奏される楽曲によって色が変えられます。観客席は外観に見られる角度と同じ傾斜で設置され、金網のような素材で作られた観客席は床から浮かんでいるように見えます。

「ブライバッハ　コンサートホール」のまとめ

村の人口は2,000人に満たない数で、中心部には空き家となった建物もありました。村があるバイエルン州ミッテ地区を活性化する企画の一端として計画された、バイエルン村の開発には4つの建物が関わっています。古い家を改装したコミュニティセンターや広場などが整備され、その中心として「ブライバッハ　コンサートホール」が建設されました。ホールは200人分の席が用意されていますが、音響の良さと外観の為もあって、開催されるコンサートは常に満席となっているようです。村のロゴにも建物の形を意匠化したものが使われていることから推測できるように、「ブライバッハ　コンサートホール」は村の自慢になっているのではないでしょうか。この建物は、設計者にとっても意義のある作品で、いくつもの賞を受賞しています。