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「ソメル コミュニティセンター」のご紹介
規模の大小を問わず地域社会には、そこに住む人々が集まれる場所を必要とすることがあります。その名称は、コミュニティセンター以外にも公民館や公会堂、集会所など様々な呼び名があります。しかし、その使用目的はほぼ同じで、地域住民のための福祉につながっています。草原を渡る風にそよぐ草を波に見立てて作られた「ソメル コミュニティセンター」は、そこに住む人たちが待ち望んだ自慢できる施設です。
「ソメル コミュニティセンター」の設計者
「ソメル コミュニティセンター」を手掛けたのは、エストニアの建築事務所、サルト アーキテクツです。この事務所は、1979年生まれのマルーヤ・カスクと1978年生まれのラルフ・ルーケ、1977年生まれのカーリー・ルイクの3人の若い建築家によって、2004年に首都のタリンで設立されました。3人はいずれもエストニア唯一の芸術専門学校である、美術アカデミーを卒業していますが、卒業前に事務所を開設し、数々の建築設計競技会(コンペ)で優秀な成績を収めています。インテリアデザインから都市計画まで建築の幅広い分野を手掛け、住宅から公共の施設などの大規模な企画を請け負っています。開設当初は若さもあったことから、がむしゃらに突き進んでいたと、彼らは語っています。国内のあらゆるコンペに次々と参加して多くの作品を送り出し、ほとんどの作品が受賞していました。チームとして活動していますが、滑らかに動き出してからは彼らの意識が変わってきて、コンペの参加はほとんどなくなってきました。それは、建築の専門家としての視野だけになることを恐れた結果です。彼らは、幅広い視野があってこそ、柔軟な思考ができ、自由な発想が生まれると考えています。また、流行は追わないとも言っていて、建物が完成する頃にはその流行りも変わっているからと、理にかなった意見を語っています。創設者の1人、カーリー・ルイクは2014年にサルト アーキテクツを去り、新しい事務所を開設しています。
「ソメル コミュニティセンター」の所在地
北部ヨーロッパの国、エストニア共和国の街に「ソメル コミュニティセンター」が建設されました。エストニアは北欧の国の1つで、旧ソビエト連邦を構成する国でした。ソ連崩壊のきっかけを作った国でもあり、独立の数年前から人々が広場などに集まって民謡や民族を称える歌を歌い、独立への機運を高めていました。この運動は、「歌う革命」とも呼ばれ、1991年に独立を回復し、国連にも加盟しています。バルト海に通じるフィンランド湾とリガ湾に面し、首都のタリンは港湾都市で古くから交易の要所として栄えてきました。ソメルは小さな農村ですが、地域の中心となる村でした。村の歴史は古く、13世紀の書物にはすでに地名が載せられていました。2017年に近隣の農村と共にラクヴェレ市に併合され、現在はラクヴェレ市の1地域になっています。ラクヴェレ市は首都のタリンから東へ約100kmに位置する街で、この地域の経済や文化の中心となっています。特にスポーツが盛んで、2022年にはヨーロッパスポーツ都市10の1つに選ばれています。日本とも繋がりがあって、大関にまでなった大相撲の力士がこの街の出身でした。引退して数年後に帰国して、現在は政治家として国の議員を務めています。このような経緯もあって、2008年にはアマチュア相撲の国際大会が開催されています。他にも毎年開催される夜間のランニング大会や、サッカーの大きな試合なども行われています。
「ソメル コミュニティセンター」の特徴
「ソメル コミュニティセンター」は、2010年に完成した地域住民のための様々な機能を備えた施設です。平屋で3つの中庭を内包したとても明るい作りになっています。屋根は横から見ると平らではなく、高低差があって、屋内の天井もそれに倣って高さが違います。一見すると木造建築のように見えますが、建物はコンクリートで作られています。無機質なコンクリートを覆うように、穏やかな色合いの細い木材が取り付けられています。これは、周囲にある牧草地や草原に見立ててデザインされた結果で、屋根の高低差は風になびく野原の草が表現されています。また、屋内の天井にも、同様の木材が垂れ下がるように不規則な長さで取り付けられています。3つの中庭の内、1番広い玄関前の前庭にも細い屋根が続いていて、半分中庭のような印象があります。そこでは、地域の行事や催し物が行われるようになっています。次に、カフェのそばにある中庭は、木の床になっています。玄関口から1番遠い中庭には芝生が敷き詰められていて、図書室が取り囲んでいます。いずれの中庭も周囲がガラス窓になっていて、明るい自然光を室内に届けられるようになっています。インテリアも、自然の温もりを感じられる素材が多用されていて、椅子などの家具も伝統的な物が使われ、小さな地域社会の家庭的な雰囲気が伝わってきます。
「ソメル コミュニティセンター」のまとめ
「ソメル コミュニティセンター」のデザインは、古くから農業を生業としているこの地域に敬意が払われています。このような施設を必要と望んでいた地域の首長は、夢にまで見た事が実現したと、とても喜んでいたようです。正に地域密着と言える「ソメル コミュニティセンター」は、風に吹かれて波打つ周りの草原にさりげなく付け加えられた、風景の1つになっていると言える建物ではないでしょうか。
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