モハメッド6世タワー(Mohammed VI Tower)

「モハメッド6世タワー」のご紹介

 

本当に感動した事柄は何年たっても忘れられないものではないでしょうか。ヨーロッパからアフリカへの入り口にある国の都市に建設された高層ビルは、依頼主が半世紀以上も前に見た物を再現したような形をしています。この搭で従業員全てを宇宙に連れていきたいと依頼主は語っています。「モハメッド6世タワー」は端正な近未来のロケットのような形をしています。

「モハメッド6世タワー」の設計者

 

「モハメッド6世タワー」はモロッコとスペインの2人の建築家が共同で設計を手掛けました。モロッコの建築家、ハキム・ベンジェロウンは、国で最大の都市、カサブランカで基礎教育を受け、建築はフランスのパリにある建築専門学校と、アメリカの大学で学びました。学生の頃から故郷のモロッコを始め、建築を学んだパリやアメリカの建築事務所で積極的に働き、経験を積みました。学業を終え帰国して1986年に自らの事務所を創設しています。スペインの建築家ラファエル・デ・ラ・オス・カスタニスは3代続く建築家の家系で、1955年にスペイン南部の都市コルドバで生まれました。国の中部にある大都市マドリードの工科大学で建築を学び、20世紀の初頭に祖父が開設したラファエル・デ・ラ・オス アルキテクトスに入社しました。2000年からは、マドリードに本拠地を置くこの事務所の代表を務めています。祖父も父親もそれぞれの時代に於いて国の近代建築をけん引してきた建築家ですが、彼も同様で、2002年に創設された最新の優秀な世界の建築を世に知らせる活動をしている「現代建築財団」の会員になっていて、財団で出版している建築ガイドの取りまとめ役も務めています。また、複数の大学で建築家を目指す学生のために教鞭も執っています。

ラファエル・デ・ラ・オス・カスタニス

「モハメッド6世タワー」の所在地

 

「モハメッド6世タワー」はモロッコ王国のサレと言う街に建設されました。モロッコは、地中海と大西洋の繋ぎ目であるジブラルタル海峡のアフリカ側に位置していて、アフリカの入り口とも言える国です。アラビア語での国名はアル・マグリブ(マグリブの王国)と言います。マグリブとは、広い意味でアフリカ大陸の北西部を表していて、この国がその中でも最も西にあることから、マグリブの王国と言われているようです。また、太陽の沈む場所や夕日を示す言葉でもあります。サレは首都のラバトに隣接する街で、国の重要な河川の1つ、アブー・ルグルグ川を挟んで右岸側になります。中世ではヨーロッパとの交易の要所になっていましたが、17世紀にわずか50年足らずの間、海賊の国家、サレ共和国が存在していました。18世紀に活躍したイギリス人作家の小説の「ロビンソン・クルーソー」にもサレの海賊が登場し、主人公はアブー・ルグルグ川の河口から脱出する冒険が描かれています。この街の産業は手工芸が盛んで、最も古い工芸品の1つが、陶芸品です。緻密な紋様と鮮やかな色合いの陶器は特産品になっていて、現在も多くの職人が1つ1つ作り上げています。また、アブー・ルグルグ川に生育していた豊富なイグサを使ったゴザも有名です。イグサのマット作りも手作業で行われていましたが、現在は機械化などにより手作りの物は少なくなっています。

「モハメッド6世タワー」の特徴

 

2025年に完成したばかりの「モハメッド6世タワー」は、高さ250mの55階建てで、国内で最も高く、アフリカでも3番目の高さを誇っていて、半径50kmからでもその姿が見えるように設計されています。この地域は、プレートの境界に近いこともあって地震が起こる心配があるため、地下80mの基礎が作られました。また、周辺には高い建物が無く、風の影響を受けることも考えられました。強風によって建物が振動することを回避するために、同調質量ダンパーと呼ばれる設備が作られています。また、アブー・ルグルグ川の洪水にも備えています。この建物は、近年叫ばれる持続可能な建築物として、様々な工夫が凝らされています。建設のために使用されたコンクリートは、製造過程でCo2の排出量を抑えた低炭素セメントが使われています。南側の外壁には太陽光パネルが取り付けられ、電力が供給されています。他にも、外壁には太陽熱の吸収を抑える建材が使用されています。夏季には降水量が少なくなるため、雨水の貯水槽が設置され、排水の再利用も行われています。この建物は、持続可能に配慮した建築物として、いくつかのグリーンビルディングの認証を受けています。「モハメッド6世タワー」は、10年以上も前に建設の計画が持ち上がりました。その前の20世紀半ばに、アメリカのNASAの施設で見たアポロ計画のロケットが依頼主の心に深い感動を与え、その形がこの高層建築に表されています。

 

「モハメッド6世タワー」のまとめ

 

当初「モハメッド6世タワー」は、依頼主が所有している企業の名前を付けた「アフリカ銀行タワー」と言う名称でした。そして、建設地は国で最大の都市、カサブランカの金融街に予定されていました。しかし、カサブランカには世界でも2番目に高い塔を持つ「ハッサン2世モスク」があり、それよりも高くなる計画だったので、建設地が首都の双子都市であるサレに変更されました。様々な要因で完成が3年も伸びましたが、遥か遠くからでも美しい姿を見せる依頼主の夢が詰まった建築物が「モハメッド6世タワー」です。

 

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