モーリシャス商業銀行(Mauritius Commercial Bank)

「モーリシャス商業銀行」のご紹介

 

何かを行おうとするときに全てがうまく運ぶとは限りません。大なり小なり問題が持ち上がってくることがよくあります。簡単に解決することもありますが、解決策を探すときに柔軟な思考の持ち主がいれば思いもよらない方法を思いつく事があります。「モーリシャス商業銀行」は、発想の転換によって問題解決を図った結果、ユニークな形をした建物になりました。

「モーリシャス商業銀行」の設計者

 

「モーリシャス商業銀行」を手掛けたのは、熱帯の海に浮かぶ島国のモーリシャスで活躍する建築家、ジャン=フランソワ・ケーニグです。彼は、1954年に芸術に関心が深い家族の元に生まれました。彼の祖母は父親の影響で絵画に深い興味を持っていいました。その祖母と共に過ごしていた事で、彼は幼い頃から上質な絵画に触れて育ちました。学校に通うようになって、絵を描くための本格的な指導を教師から受けていました。子供の頃には誕生日などの贈り物には画集や美術の本を望んでいたようで、それらの書籍から多くの事を学んでいました。国外に行くようになってからは、時間を見つけては多くの美術館を訪ねていました。20代の頃に建築を学ぶためにイギリスへ渡り、ロンドンの学校で資格を取得しました。学生の頃から様々な建築設計競技会に参加して、いくつかの賞を獲得しています。建築家としての活動の初期は、故郷のモーリシャスで始めましたが、すぐに南アフリカにある建設企業で働くようになりました。数年間そこで実績を積んだ後に、その会社の親会社にあたる企業へ移るために再びイギリスへ渡り、いくつかの大規模な企画に携わりました。30代の前半にモーリシャスへ戻り、独立して事務所を開設しています。現在彼は、モーリシャスの環境が破壊されつつあると懸念しています。特に都市部の計画性の無い拡大や、農村部の無秩序な開発が島の環境を悪化させていると憂えています。このような思いから、環境の悪化を抑えながら、発展していける道を建築と都市計画によって導き出すことを模索しています。

「モーリシャス商業銀行」の所在地

 

「モーリシャス商業銀行」は、モーリシャス共和国のカトル・ボルヌと言う街に建設されました。モーリシャスはインド洋に浮かぶ島国で、首都のあるモーリシャス島と複数の島で構成されています。西におよそ900kmの市にはマダガスカルがあり、国で2番目に大きいロドリゲス島は東に約600kmの所に位置しています。この国は、インド洋に浮かぶ島々ですが、アフリカの国に含まれています。イギリス連邦の加盟国ではありますが、住民はインド系の人々が半数以上を占めています。主島のモーリシャス島は沖縄の1倍半ほどの大きさの火山島ですが、比較的平らな地形で、1番標高の高い山でも1,000mに達していません。国の産業は農業が大部分で、特に最初の植民地時代に導入されたサトウキビの栽培が行われていて、国の農業用地のほとんどがサトウキビの栽培に充てられています。漁業も盛んで、マグロやカツオが輸出されています。また、日本の遠洋漁業の重要な中継点となっているため、日本の大型漁船が停泊しているのが見られるようです。首都のポートルイスは島の北東にあり、その南にカトル・ボルヌがあります。この街は首都圏に含まれていて、ポートルイスからおよそ10kmほどしか離れていません。この国は、ヨーロッパのいくつかの国の植民地だった歴史があり、この街は19世紀に建設されました。この地域には境界を印す石が古くからあって、4つの境界石を示す言葉が街の名前になったと言われています。

「モーリシャス商業銀行」の特徴

 

2012年に完成した「モーリシャス商業銀行」は、広い都市公園の芝生の上に建てられたモニュメントのような印象を持つ建物です。台座の上に楕円の筒を寝かせたような形の建物が載せられていますが、このような形状になったのには理由があります。建設計画が持ち上がった時に、社員の研修などに使用する講堂が必要とされました。中央に演台があり、聴衆席はそこから後部席に向かって傾斜した床面になっていて、席の床の下に無駄になる空間が出来る事を嫌った設計者が講堂そのものを上に上げることを思いつきました。楕円の下の部分がその講堂で、聴衆席の下は建物の外壁になっています。楕円の上部には、最上階とそのすぐ下の階の間に中二階のような階層が作られています。そこには管理職の部屋があり、完全に切り離された階層ではないことから、各部署との意思疎通が滑らかになるようになっています。楕円の1番下が1階ではありません。楕円の建物を支えている柱が建っている芝生の部分は、1階の屋根に相当していて、1階は社員食堂と各種設備が納められています。社員食堂の北側には傾斜した大きな窓があり、室内に自然光を取り入れられるようになっています。楕円の社屋を支える柱は4本あり、コンクリートで作られていて、多孔性で石灰質の石材であるトラバーチンで覆われています。社屋の平たい面は正確に南北を向いていて明るさを提供していますが、熱帯に位置することから強すぎる日差しを遮るために、鋳造製のアルミニウムで作られた日よけが取り付けられています。また、側面の窓には断熱効果のあるガラスが使用されています。

「モーリシャス商業銀行」のまとめ

 

「インド洋の貴婦人」と呼ばれる、自然が美しいモーリシャスの環境を危惧している設計者は、多様な面からこの建物が環境に負担をかけないようにと考えていました。首都のベッドタウンとなっていたこの街に建設されたことも、社員の通勤に関わる時間とエネルギー消費を抑える目的がありました。敷地の1部には太陽光パネルが設置されていて、この建物の電力を賄っています。また、雨水の収集設備が設置されていて、地下に貯水槽も作られています。この水は衛生設備などに使用されています。「モーリシャス商業銀行」は環境保全のための世界的な賞をいくつも受賞していて、最も印象深いアフリカの建物とも称されています。

 

 

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