ランタン パビリオン(Lantern Pavilion)

「ランタン パビリオン」のご紹介

 

ランタンの歴史は古く、灯りを持ち運べるように発明されましたが、正確な時代や発明者は諸説あるようです。日本を始めとするアジアに広く伝わる提灯も同様の道具とされています。語源はフランス語が元となっているようですが、更に、ランプや松明を意味するラテン語のランテルナが由来と言われています。北欧の街に設置された大きなランタンは、日中でも人々を取り囲み、夜間は街のランドマークとして光り輝いています。

「ランタン パビリオン」の設計者

 

「ランタン パビリオン」を手掛けたのは、ノルウェーにある「アトリエ オスロ」です。2006年に共同設立された建築事務所で、ニルス・オーレ・ベ・ブランツァーグ(1975年生まれ)とトーマス・リュー(1978年生まれ)、マリウス・モウ(1973年生まれ)ジョナス・ノルステッド(1973年生まれ)の4人が運営しています。彼らは共にオスロの建築学校で建築に於ける様々な事柄を学びました。学校を卒業してから事務所を開設するまで彼らは,それぞれノルウェーの建築事務所に席を置き、経験を積みました。この事務所ではAWPと言う2011年にアメリカで提言された、建設時の様々な工程を細かく、わかりやすい項目に分けて、生産性の向上や費用の削減を目的とした方法で建築物を作っています。彼らの建築に対する考えは、構造や光、空間という基本を大事にした上で新たな解釈を付け加えています。また、建設される建物にふさわしい建築素材にもこだわりを持っています。彼らは、高品質な個人住宅から大規模な公共施設まで大小の様々な企画を遂行しています。著名な建築事務所が多く存在する北欧に於いて、まだ若い彼らの事務所は自由な感性を持ち、伝統も大事にしながら新たな建築物を生み出しています。

「ランタン パビリオン」の所在地

 

「ランタン パビリオン」は、ノルウェー王国の南西部に位置するサンドネス(または、サンネス)の中心地に建設されました。この街は、北欧に特有の地形であるフィヨルドの1つ、ガンズフィヨルドの一番奥から西側に広がっています。このフィヨルドは、ノルウェーで4番目に大きな北海につながるボクナフィヨルドの支流です。ボクナフィヨルドは、通常の氷河による浸食で出来たものと違い、地殻が沈み込んだことから形成されています。フィヨルドに面していたことで、太古より人が暮らしていた痕跡がありますが、街として正式に自治体となったのは19世紀の中頃です。中世の頃にはレンガや陶器の製造が盛んで、「陶器の町」として知られていました。18世紀に設立された陶器製造の会社が、小さな鳥の形をしたオカリナのような製品を作り、宣伝用に配りました。この小さな陶器製品は「サンドネスガウク」と呼ばれ、今ではこの街に住む人の呼び名となり、意匠は20世紀の後半に正式に市の紋章として定められています。また、この街は自転車の街としても有名です。19世紀の終わりに自転車を作る会社と工場が設立されて、街の主要な産業の一つとなっていました。現在、工場はありませんが、本社はそのままこの街にあります。近年では、国内でも有数のサイクリング都市と言われ、市内には自転車の専用レーンが整備されて、毎年100km弱の距離を走破する北海ロードレースの出発地となっています。

 

「ランタン パビリオン」の特徴

 

2010年に完成した「ランタン パビリオン」は、街を優しく照らす灯りと言える建物です。外観はこの地域の伝統的な家を単純化した形で、木材の枠にガラスが取り付けられていて、内側からの明かりが外に向かって広がっている印象があります。木材は全て同じ大きさで、欧州松から製材された90cm角の材木で骨組みが作られています。この骨組みは2重になっているので、内側からは組木細工のような繊細さを見ることが出来ます。4か所にある屋根を支えている柱は、数本の木材を不規則に組み合わせてあり、一部はベンチのように腰掛けられるようになっています。不規則な形の4組の柱は何かのキャラクターの4本の足のようで、屋根を担いでどこかに行こうとしている風にも見えます。ガラスは、屋根瓦のように一部を重ねるかたちで取り付けられていて、ガラスを取り付けるための金具などを使わない方法がとられています。ガラスには、すりガラスのような半透明の装飾が印刷されています。模様があることで、日中の直射日光が柔らかくなり、夜間の外に漏れる照明もソフトな雰囲気になります。夜には正にカンテラの明かりとなって遠くからもよく見える建物で、家庭的な温もりと、伝統を再解釈したことによる未来を示唆する意味が込められています。

 

 

「ランタン パビリオン」のまとめ

 

「ランタン パビリオン」は、2008年にこの地域が文化都市に選ばれた時に、木材建築を推進するためと建設地の地域を活性化する為の建築競技会で優勝した作品です。自動車の入れない歩行者のみが通行できる地区の広場に、多少の天候の悪さにも対応できる、待ち合わせやストリートコンサート、市場のような役割を持たせるために作られた「ランタン パビリオン」は、市民の集いの場となっています。

 

 

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