「レティ 360」のご紹介
世界にはたどり着くのが困難なリゾート地がいくつか存在しています。「レティ 360(Leti 360)」は、その中でも特に難易度が高いリゾート地です。しかし、難関を経てたどり着いた先は、神々の地とも呼ばれる絶景を望むことの出来る場所です。その風景を壊さないよう、慎重に建設された宿泊施設が「レティ 360」です。
「レティ 360」の設計者
「レティ 360」を手掛けたのは、インド第2の都市ムンバイで生まれたビジョイ・ジェインです。1965年に医師の息子として生まれ、育ちました。基礎教育を終えた後、インドで建築を学びました。家族を不慮の事故で亡くした後にアメリカへ渡った彼は、大学でさらに建築を学び、研究していました。大学を出てから、白い建物で有名なリチャード・マイヤーの元で数年間働いていました。その後、インドに戻り、1995年に「ビジョイ・ジェイン アソシエイツ」と言う会社を立ち上げました。10年後の2005年に現在の「スタジオ ムンバイ」と社名を変えています。「スタジオ ムンバイ」は通常の建築事務所と違い、建築に携わる様々な職業の人々がメンバーとして働いていて、「建築集団」と彼は言っています。設計士はもちろん大工や石工などの職人がこの事務所に席を置いています。彼は、インドの厳格な宗教の伝統工芸や、手仕事を重視しながら西洋の文化や手法も取り入れています。また、人間と自然の関係と融合にも大きな関心を持っていて、竹や木材、石材など自然の素材を多用し、建設場所の自然環境に留意しながら建物を作っています。インド国内だけで活動していた彼が初めて手掛けた国外でのプロジェクトは、尾道にある古いアパートの再建でした。宿泊施設とカフェなどが入っている「尾道LOG」も、木々に囲まれ、瀬戸内の海を見下ろす自然と融合した建物に生まれ変わっています。
「レティ 360」の所在地
インド共和国の北部にあるウッタラーカンド州のレティと言う村に「レティ 360」が建設されています。ウッタラーカンド州は、中国のチベット自治州とネパールに国境を接する州で世界最高峰のヒマラヤ山脈の麓に当たる地域です。州の南東部はクマオン地方と言って「神々の故郷」と言われています。クマオン地方の中ほどに位置するバゲシュワー地区に属するレティは、段々畑に囲まれた谷あいにある小さな村で、都会とは正反対の静かな所です。クマオン地方の産業は稲作や小麦などの穀物栽培と果樹などの農業と、鉄や銅、石膏などの鉱物資源の採掘が行われています。他にもこの地域の経済を支えているのは、国内でも有名な観光地としてヒマラヤ山脈を望むことのできる風景の良い場所や、ピンダリー氷河やカフニ氷河などいくつかの氷河を登るトレッキングなどを楽しむことが出来ます。また、広大な野生動物の保護区があり、希少な動物や鳥の生息域となっています。石器時代の遺跡なども点在していて、大変古くから人が住んでいた場所でもあり、多くの権力者に支配されてきた歴史があります。その中で建造された寺院なども多く残されていて、重要な観光資源となっています。冷涼な気候なので、避暑地としても人気のある地域です。
「レティ 360」の特徴
たどり着くのが難しい場所に建てられている「レティ 360」は、2007年に完成した宿泊施設です。ヒマラヤ山脈の麓に当たり、日本アルプスにも同じくらいの高さの山がいくつかある、標高が2,300m以上の場所に作られています。周囲には棚田や段々畑が作られていますが、同じような地形を作り、山の斜面に点々と4つの宿泊の為の小さな建物が建っています。それに加えて食堂などの共有の建物が一つあって、その建物が「レティ 360」の中で一番高い場所に作られています。周囲の環境や地形を壊さないように十分な配慮をした建設方法が使われていて、どの建物もほぼ同じ作りで、地元で採石されている石を積んだこの地域の伝統的な建築方法が取り入れられています。山の開けた方側には、オーク材(楢、なら)で作られた枠に大きなガラス窓が取り付けられています。壁一面がガラスになっているので、とても明るい室内となっていて、素晴らしい景色を望むことができます。一番近い自動車道から数㎞離れている為、建築材料や工具などは全て人や使役獣のラバによって運ばれ、建設には重機などは使われず、石工や大工によって行われました。電気は通っていないので、夜間の証明やお湯を沸かしたりするために使われるエネルギーは太陽光発電によって賄われています。
「レティ 360」のまとめ
「レティ 360」に行くには、最寄りの自動車が通れる道からおよそ2時間は歩かなくてはならなく、70名以上の石工や職人によって建設された、正真正銘の手作りのリゾートです。現在は都会とまで言わず、小さな町でも夜間もあちこちにある人工照明が明るく照らし、家にいて世界中の情報を見聞きすることが出来ます。しかし、「レティ 360」では自然以外のものはほとんどありません。設計者のビジョイ・ジェインが言う「生物(人間)と自然の融合」をわずかでも体験できるのが「レティ 360」と言えるのではないでしょうか。
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