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「スイス医学研究財団 ラ チューリップ」のご紹介
相反する事柄を組み合わせると、思いもよらない効果が表れることがあります。華やかとは言えない職業と思われやすい研究を行う場所が、彩り豊かな建物になったり、無骨な印象になりがちな建築様式に少しの色彩を加えたりすることで、新しい表現を備えた建築物が出来上がることがあります。「スイス医学研究財団 ラ チューリップ」はソフトなブルータリズム建築と呼ばれています。
「スイス医学研究財団 ラ チューリップ」の設計者
「スイス医学研究財団 ラ チューリップ」を設計したのは、インドで生まれ、後にスイスの市民権を取得したジャック・ヴィカジー・ベルトリです。彼は1931年に、当時はイギリス領だったインドのボンベイ(現在のムンバイ)で、イタリア人の建築家とインドの裕福な家柄の母親の元に生まれました。両親が離婚したことから、インドの3大財閥の1つに挙げられるタタ家に嫁いだ姉の元に身を寄せ、幼い時を過ごしました。インドで中等教育を終えた後に、養父の計らいでスイスのジュネーブにある大学に入学して、フランス人建築家の元で建築を学びました。その後、いくつかの奨学金を得て、アメリカ東部の歴史ある大学で都市計画と美術を学びました。その学生時代に、当時の近代建築をけん引していた複数の建築家や発明家、技術者と知り合う機会を得ました。大学を卒業してからは、アメリカでいくつかの大規模な企画に加わり、建築家として活動を始めました。1960年にインドへ帰国して、首都デリーの都市設計に携わり、加えて、農村部や都市の貧困層のために、より良い生活が送れるような住宅建設にも尽力しています。その他に民間の企画の依頼を受けていましたが、彼の義兄に紹介を求める声が多くなり、それを疎ましく思い始めました。そのころにスイスから提案された、市民権を得て自らの建築事務所を開設するという提案を受け入れ、スイスに移住して、ジュネーブに自らの事務所を開き、複数の建築家やデザイナーと共にインドやヨーロッパ、アメリカでの企画を手掛けています。
「スイス医学研究財団 ラ チューリップ」の所在地
「スイス医学研究財団 ラ チューリップ」は、スイス連邦第2の都市であるジュネーブに建っています。スイスは、多くの国が認めている永世中立国として有名な内陸の国です。周囲を3つの国に囲まれていて、イタリアとの国境にはアルプス山脈が横たわっています。国土は狭く、九州よりわずかに広いくらいです。公用語は周囲の国々の言語と国の南東部で使われているロマンシュ語の4つで、地域によって使い分けられていますが、紙幣には額面などの記載に4つの言語が全て書かれています。ジュネーブはスイスの西の端に位置していて、フランスとの国境にもなっているレマン湖の南の端に広がっています。周囲をほぼフランスに囲まれ、レマン湖の湖岸から数㎞の幅で隣接する州と繋がっています。地理的要因と歴史的な理由から、この地域ではフランス語が多く使われています。この街が州都を務めるジュネーブ州(正式な名称は、ジュネーブ州及び共和国)は16世紀の中頃から250年以上の間、ジュネーブ共和国と言う独立した国家でした。18世紀の終わりに、わずか16年の間フランスに併合されましたが、1815年に強い自治権を持ったままスイス連邦に加盟しました。元来、どこの国とも争わず、同盟もしない中立を理念としていた国だったので、スイスに加わった後に多くの国際機関が本部や専門の事務所を置いています。また、医療を中心とした国際的な人道支援団体の「赤十字社」は、この街で発足しました。
「スイス医学研究財団 ラ チューリップ」の特徴
ジュネーブ大学病院をはじめ、多くの病院がある地域の一角に建つ「スイス医学研究財団 ラ チューリップ」は、1972年に開館しました。この建物は、無骨な印象を持たせる建物が多い、ブルータリズムと呼ばれる建築様式ですが、4面の壁が色彩豊かなガラスによって独特の雰囲気を醸し出しています。敷地の面積を考慮して、太い柱の上に立方体の箱を置いたような形で、打ち放しのコンクリートで建設されています。建物の下部が小さく、上部が大きいので、建物の強度を上げるために56本の補強材が各所に入れられています。立方体の4面は、ピンクやオレンジ、青色に反射するガラスが大きな窓として嵌め込まれています。ガラスは、アメリカ製の外気の熱を遮断するものが使用されています。太い柱と箱の境目は、切子ガラスの模様のような、直線的な幾何学模様になっています。この形と、ガラスの色合いから「チューリップ」の名称が付けられました。建物の使用目的を考え、将来の研究内容にも対応できるように、屋内は小さな部屋に分けるのではなく、目的に沿った広さに変更できる仕様になっています。大きな窓は、自然光を取り入れながら、研究職という無機質的な仕事に彩りを添えています。これらは、この建物を建設する際、設計者が基本原則として「機能性と空間の関係」と「自然の光と彩り」を挙げていたためです。
「スイス医学研究財団 ラ チューリップ」のまとめ
建設から半世紀が経ち、窓ガラスの遮熱効果が薄れ、建物も老朽化してきましたが、残すべき優れた建築物として、215年にジュネーブの建築遺産として登録されました。近年、改修工事と補強などが行われ、外観も完成当時の美しさを取り戻しています。医療の研究に終わりはありません。それを支える「スイス医学研究財団 ラ チューリップ」は、今も華やかさを保ち続けています。








