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「クライペダのイルカ水族館」のご紹介
かつては街を守る砦があった場所に、海に住む生き物を紹介し、保護や研究をする施設が建設されました。世界中に水族館はたくさんありますが、バルト海に面した街にある施設は子供たちの心を守る企画も備えています。「クライペダのイルカ水族館」は、100年以上前に街を守った要塞が人々の心を癒す施設に生まれ変わりました。
「クライペダのイルカ水族館」の設計者
「クライペダのイルカ水族館」を手掛けたのは、リトアニアの建築家、ペトラス・ラペです。彼は、1924年に現在のリトアニアで重要な位置にある都市、クライペダ近郊の町で生まれました。父親の事業の関係で、国の中央部に位置するカウナスと言う街に移り住み、子供時代を過ごしました。世界中が不穏な空気に包まれた頃、国際情勢も不安定となり、軍に徴兵されましたが、それを拒否して身を隠していたようです。
戦争が終わってからクライペダに戻り、そこで中等教育を終えました。建築を学ぶために再びカウナスへ向かい、そこの工科大学で6年間、建築と工学を習得しました。卒業後に生まれ故郷のクライペダへ戻り、自治体の機関に入って建築家として活動を始め、クライペダを中心に活躍していました。彼は、社会活動に関心があり、自然の保護にも力を注いでいました。特に、街のそばにある砂州については、無計画な住宅建設を阻止するために自然保護区の計画を立て、国の政府に承認された経緯があります。
また、40代の頃には建築家協会のクライペダ支部を仲間の建築家と共に立ち上げ、支部長を6年間務めています。55歳の時に国から名誉建築家の称号を授けられ、当時はリトアニアがソビエト連邦の1員だったことから、ソビエトの国家賞なども受賞しています。国の1地方を拠点として活動していましたが、リトアニアの建築界にとって重要な人物であった彼は、2012年に88歳で病気のために他界しています。
「クライペダのイルカ水族館」の所在地
「クライペダのイルカ水族館」はリトアニア共和国の西部にある港湾都市のクライペダにあります。リトアニアは北ヨーロッパに含まれる国で、バルト3国の1つです。バルト海の東岸に位置していて、内陸側は3つの国とロシアの飛び地と国境を接しています。
現在の共和制国家になる直前はソビエト連邦の1員でしたが、1991年のソ連崩壊によって完全な独立国家となりました。21世紀に入って、欧州連合や北大西洋条約機構にも加盟し、通貨はユーロが使われています。クライペダの街は、国で唯一の重要な港を備える港湾都市です。
特殊な地形が広がる場所で、古くから交易の要として栄えてきました。中世後期に北ヨーロッパの都市が連携を持ち、円滑な交易が行われるように組織された「ハンザ同盟」に加入していました。街の西には特徴的な自然地形があります。クルシュー潟と呼ばれる細長い砂州によってバルト海から隔てられている水域があります。街のそばで砂州が途切れ、わずかな隙間でバルト海と繋がっています。
クライペダ海峡と呼ばれるその海峡は、最も狭い所でわずか360mですが、橋は架けられていません。水は、ほぼ淡水ですが、海峡があるため薄い濃度の塩水の所もあります。生息している魚類のほとんどは淡水魚ですが、海水魚も生息しています。また、産卵のためにクルシュー潟にやってくる魚もいます。一時は水の汚染によって魚の種類や数が減っていましたが、今は水質対策を行ってきたため回復しています。
「クライペダのイルカ水族館」の特徴
1994年に開館した「クライペダのイルカ水族館」は、それ以前に運営を開始している海洋博物館の付属施設として建設されました。
1979年に開館した海洋博物館も設計者は同じで、19世紀に作られた要塞を改修して利用しています。クルシュー砂州の北の端にあった要塞は、周囲を堀に囲まれた円形の建物でした。設計者は、特徴的な自然と歴史的な背景を尊重し、それらと繋がりを見ることができる建物にすることを念頭に置いてデザインしました。
博物館には水族館も併設されていて、多くの魚類や海洋哺乳類が飼育されています。「クライペダのイルカ水族館」の建設を企画したのは設計者で、最初に考えたのは水槽のことでした。そばに広がるバルト海から海水を汲み上げ、ろ過して不純物を取り除き、塩分濃度も調節した水を作る設備が考えられました。ろ過も自然の砂を使って行われています。
この水族館の建物も博物館と似た形で、円形の大きなプールが中心となるように作られています。この地域は1年を通して冷涼な気候のため、屋内にイルカ達のためのプールが作られました。冬季には加温されて水が冷たくなりすぎないように配慮されています。プールを際立たせるために、客席や床などは控えめな色使いがされています。
開館から約25年が経った2010年に1部の改築が行われ、屋内プールの天窓や、夏季に使える屋外プールが建物の西側に設置されました。この改築を請け負った設計者は、元の設計者であるペトラス・ラペの理念を尊重し、外観に大きな変更は加えませんでした。
「クライペダのイルカ水族館」のまとめ
イルカ達の演技ととられるショーについて賛否両論あるようですが、水族館の役目の1つに海洋生物の保護と研究があります。その過程で、自然に返せない動物の機能訓練を兼ねた動きが、一般の人々に楽しみを与えているのではないでしょうか。「クライペダのイルカ水族館」では、機能的に支障のある子供たちの心理的療法をイルカ達が手伝う企画があります。人数に限りがあるものの、一定の効果が見られ、この特徴的な取り組みは高い評価を得ています。海洋哺乳類と人との間に一定の繋がりを見出せる施設が「クライペダのイルカ水族館」ではないでしょうか。
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