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「ライクパークのコンサートホール」のご紹介
東欧の国の都市にある緑地公園に建設された施設は、「街の潜望鏡」とも呼ばれる面白い形をしています。様々な人が訪れ、楽しむための施設は愛着も持ってほしいものではないでしょうか。愛称もつけられた「ライクパークのコンサートホール」は、思いがけない形をしたコンサートホールです。
「ライクパークのコンサートホール」の設計者
「ライクパークのコンサートホール」を手掛けたのは、イタリアのローマで生まれたマッシミリアーノ・フクサスと彼の妻であるドリアナ・マンドレッリ・フクサスが率いるスタジオ・フクサスです。マッシミリアーノ・フクサスは1944年にリトアニア系ユダヤ人の父の元に生まれました。10代の頃にイタリアの芸術家の元でしばらく働いた後にイタリアを離れ、1960年代にイギリスのロンドンを中心として活動していた「アーキグラム」と言う前衛的な建築家のグループに参加していました。アーキグラムには、当時は若手だった著名な建築家が多く参加しています。その後、デンマークの高名な建築家の元で働いていました。1969年にローマの大学を卒業していますが、学生だった頃に最初の事務所を開設しています。1985年には現在の妻のドリアナ・マンドレッリと共にスタジオ・フクサスを開設して現在に至っています。彼女は2007年にフランスの大学で建築を学び卒業しています。設立当初はヨーロッパを中心に活動していましたが、近年はアジアの大きな企画にも参加するようになっています。現在は、イタリアのローマを拠点にフランスのパリと中国の深圳(しんせん)にオフィスを構え170人以上のスタッフと共に活躍しています。彼は、世界中の多くの大学で教鞭をとり、フランスやイタリアの勲章も授与されています。
「ライクパークのコンサートホール」の所在地
「ライクパークのコンサートホール」はジョージア国の首都トビリシのライクパーク緑地公園の中に建設されています。ジョージア国は、東欧のカスピ海と黒海に挟まれた地域の黒海の東側、中央に位置しています。この国は、日本国内で以前はロシア語読みの「グルジア」と呼ばれていましたが、現在は英語読みの「ジョージア」と表記されています。首都のトビリシは内陸の都市で、周囲を小高い山々に囲まれていて、国内の主要な河川になるクラ川の両岸に街が広がっています。気候は比較的穏やかで、夏の最高気温は平均で30℃前後で、冬季でも氷点下をわずかに下回る程度です。降水量も年間を通して平均的ですが、日本の梅雨と同じころに雨が多いようで、冬季は降雪になる事が少なく少し乾燥気味の気候になっています。トビリシの地名は、この地域の温泉が多くあることから、古い言葉で「暖かい場所」と言う意味のある「トビリ」から付けられたと言われています。街の歴史としては、ヨーロッパとアジアの交差する場所で、クラ川を利用した水運もあったことから古くから交易の拠点として栄えてきました。このような要因から、ペルシャ時代から近年まで様々な権力者に支配されてきた歴史があります。その為、その時々の建築様式で建てられた様々な建物が現在も残されていて、街の複雑な歴史の証拠であり、重要な観光資源にもなっています。
「ライクパークのコンサートホール」の特徴
「ライクパークのコンサートホール」は、クラ川の河川敷に作られた広い緑地公園の北側に建設されている、金属的な光沢のある2本の筒状の建物です。その2本の筒は、川に沿って走る大きな道路を支える擁壁から生えているような印象があります。2本の筒は少し形が異なっていて、南側の小さい方は中央部分がくびれています。川の方に向かって開かれている円形の入り口には、幅の広い階段が作られて訪れる人々を迎え入れています。北側の建物は、560席のホールやホワイエ、カフェなどが入っていて、高さが13mある擁壁側が広く、川の方に行くに従ってわずかにすぼまった形になっています。川の方の面には、複層ガラスと言われる2重になったガラスがはめ込まれています。複層ガラスには、ガラスとガラスの間に特殊なガスを封入したものや、真空状態になったものがあって、断熱や遮音効果を高めることが出来ます。建物の基本は鉄筋とコンクリート製で、外装にステンレスのパネルが取り付けられています。大きなカーブではありませんが、曲線のある建物なので、様々な大きさと形の菱形のパネルが使われています。どちらの建物も擁壁より高くなっていて、道路側からもこの施設に入れるようになっています。
「ライクパークのコンサートホール」のまとめ
「ライクパークのコンサートホール」がこのような形になった理由の一つは、この施設のそばに架かる「平和の橋」と言う、歩行者専用の橋の形状と視覚的に連携する為との設計者の思いからでした。また、およそ2階分の高さのある巨大なガラス窓のような壁からは、川の対岸に広がる古い歴史のある街並みを望むことが出来ます。金属光沢のある近未来的な形状の建物の先には、それらを生み出したとも言える歴史の重みを感じさせる風景が広がり、時間の流れも感じさせているのではないでしょうか。
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